得手 不得手?
                 〜789女子高生シリーズ

                *YUN様砂幻様のところで連載されておいでの
           789女子高生設定をお借りしました。
 


すったもんだの学園祭が終わってしばらくは、
一気に暇になったせいか、どこかほよよんとしていて、
あっと言う間に過ぎたような観のある霜月、11月だったものの、

 「それでも、久蔵殿のバレエ団の公演を観に行きましたし。」
 「そうそう。可憐なお姫様でしたよねぇ。」
 「〜〜〜〜〜。//////」

その他一同ではなく、
この若さでちゃんと役をもらえているその実力は、
数十年に一人という逸材の発掘だの、綺羅星の出現だのと、
あちこちからも注目を浴びているそうだけれど。
何と言ってもご本人が、見栄えに反比例して地味な性格なもんだから。

 『………地味?』
 『無体を仕掛けられたら、問答無用で飛び出してく鉄砲弾ですが?』
 『………。(頷、頷)』

当人までもが そりゃあ正直に頷いて肯定するのを、
そこ、頷いてるんじゃないとわざわざの注意を喚起しつつ、

 『引っ込み思案なご令嬢なものでと、
  バレエ団の主幹せんせえは何とか誤魔化してくれているのだよ。』

そうでもしないと、テレビや雑誌のインタビューだの、
果てはテレビ出演だのという話まで降って来かねぬほどに、
今時は 切っ掛け次第で誰でもアイドルになれちゃうご時勢なので。
そういう場に引っ張り出されたその末に、

 『断りもなく手を引いたの、肩に触っただのと、
  関係者の殿方を、ぶん投げたり蹴り飛ばしたりしたらどうするね。』

 『……うあ。』
 『何か 重々あり得そう。』
 『………。(頷、頷)』

こらこら、本人まで。
(苦笑)
兵庫せんせえだとて、
長年このお嬢様の主治医をやって来られただけの蓄積はお持ち。
確かに人付き合いが下手なので、
大人しい引っ込み思案…と言って通らなくもないのだが、

 『お前たちが知らないところでもな、
  こやつはあれこれと派手にやらかしておるのだよ。』

思い出したら頭痛がするのか、少々眉を顰めたせんせいだったが、

 『………?』

可憐な久蔵お嬢様、かっくりこと小首を傾げ、
そんなにたくさんあったかなぁと考え込むよなお顔になったの、
視野へと入ったその途端、

 『いやいや、いいんだ。お前はいつだって正義感の塊でおればいい。』

いつも頭を上げて、凛と、毅然としていればいいと。
そうと言って、
強い子になるよう育てたのは他でもない兵庫せんせえだったらしく。

 『ただまあ、どっかで何か間違えたらしいが。』
(笑)

まま、思う通りには行かぬのが、フレキシブルな人の子な証拠よと、
そこは楽観的に把握なさってるようでもあるので。
こちらの二人は、
時間が掛かりそうながら、
でもでも どこへも寄り道はしないまま、
無難にゴールインしそうな気がするねとは、
あとの二人からの共通したご意見であり。

  まま、それはさておき。

 「えっと、何の話をしてたんだっけ。」
 「???」

こらこら、カレンダーの話でしょうが。

 「そうそう、あっと言う間に11月も終わりだと。」
 「来週はもう12月ですものねぇ。」

さすがにそろそろ、屋外での長居は足元から冷えて来るのでと、
いつもの常席だったすずかけの木陰も、
今では教室から見下ろすところとなっており。

 「12月には期末考査が始まって、そのまま冬休みへ突入ですものね。」
 「ううう、今回は物理が凄んごい定理ばっかなトコですよねぇ。」

色々とあったせいか、
小難しいお説を聞いても、何かしら気が紛れての見ない振りしていられたものの、
さあ試験だとなればそんな言い訳は通じない。
ああううう〜と早くも悶え始めているひなげしさんなのへ、

 「ヘイさんて、機械いじりが好きだしPC関係もお手の物なのに。」

なのに理科系は苦手なの?と、
肩先へ金絲の裾をすべらせて、かわいらしくも小首を傾げた七郎次だったのへ、

 「私の得意はむしろ文系なんですて。」

そりゃあまあ、
運動曲線の計算だの、質量の干渉における公式だのも、
多少は要りようなのが工学ですし。
臨床だ実証だにかかろうとなれば物理も重要ですけれど。
どっちかといや、
プログラムを構築したり、論証の詰めを固めたりが好きなんですよと、
やや憮然として言い放ったところが、

 「???」
 「ヘイさん、専門的すぎて判りにくい。」

そんだけ難しいことが把握出来てて、なのに不得手ってアリ?と。
七郎次や久蔵にしてみれば丸きり腑に落ちないらしいけれど、

 「そういうものってありますよぉ。」

決して不自然じゃあないものと、こちらもそこは譲れぬか、
ふくふくの頬をなお膨らませ、譲らないヒナゲシさんが思いついたのが、

 「期末考査の前に、ほら、マラソン大会があるじゃないで…。」
 「いやぁ〜〜〜〜っ。」

いやいやいやと、聞きたくない怪談を耳に入れたくない子がするよな格好、
自分の手で両耳を塞いで悲鳴を上げたのが、
他でもない白百合さんだったりし。

 「………☆」
 「そこまでお嫌いだったとは。」

いえね、短距離が得意なお人は、
その代わりのように、長距離は案外と苦手だって言いますし、と。
学園でも一、二を争う韋駄天二人のどっちかでも、
苦手じゃなかろかとの想いから、カマをかけたらしい平八だったようで。

 「そう言うヘイさんはどうなんですよ。」
 「私はアメリカの大平原で育ったクチですよ?」

嘘おっしゃい、都会っ子じゃないですかと七郎次が突っ込めば、
いえいえ、
住居があったのはどっちかと言えば片田舎みたいなもんでして、と。
正直なところというのを披露しての曰く、

 「おまけに敷地の中にお爺様の研究施設があったんで、
  だだっ広い分、
  物を取りに行ったり、呼びに行ったりがいちいち大変で。」

いっそ庭ん中をカート走らせよっかなんて案が、
しょっちゅう出てたほどでしたと。
広けりゃ広いでの苦労を肩をすくめつつ吐露してから、

 「なので、昨年の大会では23位でした。」
 「わあ、結構上位じゃないですか。」

いやな催しだったので、話題にしたくもなかったらしい白百合さん。
今頃お友達の成績を訊いているほどのタイムラグって一体……。
(苦笑)

 「ちなみに、久蔵殿は?」

何が?を省略したにもかかわらず、

 「〜〜〜〜。(否、否、否)」

何も考えなくていいから、陸上競技は大体好きだと、
腕を前後に振ってのアクションつきで、ストライクでの即答が返る。
好きだってだけじゃあなく、おおむね いい記録も出しており。

 「去年のマラソンは、確か2位でしたよね。」
 「1年 187人中では1位でしたよね。」

今は三年の○○様が、国体でもメダルを取られた実力発揮して、
通年1位を連続して取っておいでで。
それへはさすがに歯が立たなんだ久蔵だったようだけど、

 「つか、シチさん いやに正確ですね、数字。」
 「だって、せめて50番以内でゴールしないとって、
  そりゃあ頑張ったんだもの。」

運動音痴はお嫌いかも知れないって、あのその思ってたから、と。
三人の他には誰も居残ってない教室だのに、
それでも段々とお声が小さくなったのが何とも可憐。
誰が?の部分は言われずとも判るが、

 「勘兵衛殿ってそういう細かいことは言わないと思いますけどね。」
 「………。(頷、頷)」

むしろ、運動音痴 大いに結構、
頼むから大人しくしていてほしいと、思ってるんじゃあなかろかとは、


  「〜〜〜〜〜。/////////」 ×3


そうですね、何も勘兵衛殿に限った話じゃあありませんか。
(大笑)

 「で、でも、シチさんて、剣道やっててお裁縫や編み物も得意で。」
 「でもでも、ヘイさんみたいに、お料理がパパッとは出来ないし。」
 「お洋服のコーデュネイトが、センスあってお上手で。」
 「ヘイさんだって、いつも可愛らしいカッコしているし、
  絵心がお在りだから色の組み合わせが…。」

落ち込んでいる場合じゃあない、
何とかお互いを持ち上げ合おうとしている二人だが、
そんな彼女らの一言一言へ
“もっともだ、まったくだ”と、うんうん頷いてる約1名。

 「…そういや、久蔵殿って何でも出来ますよね。」
 「数学も物理も得意で、英語も試験の点数は上位ですし。」

手先も器用で、ケーキも焼けて。
スキーもスケートも上手にこなすんですよ、このお人。
犬猫を懐かせるのは相変わらず本能レベルでこなしているし。
ネイル塗るのも上手だし、と。
あれあれ、矛先がこっちへ回って来たぞと、
ややもすると後ろへのけ反りかかった紅バラさんだったものの。
すぐ後ろが机の列だったので、行き場がなくなり……

 「………。」

白い指先、ついと延ばして見せると、
まずは平八の方を指さした。

 「英会話が巧み。」
 「だって、生まれたときから使ってますし。」

それからそれから、七郎次の方を指さして、

 「島田の逆鱗。」
 「…………………え?////////」

え?え? それってどういうことでしょか?
何ですか久蔵、何か知ってることがあるんでしょうか?
七郎次は真っ赤になっての困惑気味に、
平八は逆に、興味津々、楽しそうに訊いて来て。

 「…………。」
 「ねえねえ、久蔵。どういう意味ですよぉ。」
 「内緒なんて無しですよ、アタシのことなんでしょう?」

言い回しが悪かったかなと、
二人掛かりで揺すられつつ、微妙に後悔した紅バラ様。
正確には、

 『お主との決着は着けられん。』

随分と以前、
無茶を承知で前世からの借りを返せと詰め寄ったことがあった久蔵で。
その折のやりとりを、つい持ち出したまでのこと。
曰く、
あの蓬髪、あご髭の壮年殿は、
それはあっさりと、そしてはっきりと。
紛うことなくの“否”と返したその後へ、

 『よしか? そんなことになったなら、シチがどう思うね。』
 『………っ。』

それは自然な口調にて、こちらの美少女を楯にと繰り出し、

 『大事な友が怪我でもしたら?
  きっとあやつは儂を詰るだろうな。
  か弱い女子に何をしておりますかと。』

そして、そんな男は許せぬと、口も利いてくれなくなったら。
成程 儂を凹ますには打ってつけだが、
そんな方法で勝って、果たしてお主は嬉しいか?と。

 「……………。(〜〜〜〜〜。)」

今にして思えば、随分な言い掛かりだらけの説法だったが、

  ―― シチが困れば 島田も困る
     という順番の勝ちしか、成立しなさそうだから

うっとたじろいでしまった時点でこちらの負けで。
口惜しいかな、
手も触れぬまま 不戦敗になったのだと、
言いたかったのだけれども。

 「ねえってば、久蔵殿。」
 「〜〜〜〜〜。」

  確かに、色々と足りないというか
  言い間違いも甚だしかったというか


  期末考査とマラソン大会、頑張ってね、皆様。
(こらこら)






   〜どさくさ・どっとはらい〜  10.11.26.


   *そういえば、
    最初のお話がクリスマスに温泉へ行こうって話だったのですよね。
    早いなぁ、あれからもう1年経つのか。
    学生さんには、なかなか過ぎてかない1年でしょうが、
    大台を越したら、毎日があっと言う間なんだよ、
    だから、若いうち今のうちに色んなことをやっとこうね?
(切実)

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